カテゴリー: arts

  • 展示作家Peter Granser(写真家/ドイツ)

    展示作家Peter Granser(写真家/ドイツ)

    展示作家Peter Granserの紹介です。

    2013年5月にレジデンスアーティストとしてスタジオクラで滞在制作をしたペーターさん。
    今回、芸術祭の参加に合わせて、糸島へ再訪です。

    前回、スタジオクラで開催された個展[Schatten Felder  – 農道に沿って-]では糸島を探索し、写真や動画に収めたペーターさん。展覧会は多くの人でにぎわったことを昨日のように思い出します。

    Peter Granser個展[Schatten Felder  – 農道に沿って-] / 2013年 / スタジオクラ
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    その個展は松尾芭蕉の旅行記「奥の細道」にインスパイアされ、パートナーのベアさんと共に、糸島の地を端から端まで巡りました。
    手にはカメラ、足は自転車。時に山をも登り、農村では市井の人々と交流し、寺に訪ねる、その過程は松尾芭蕉と河合 曾良のようでもあります。
    しかし、そこに収められていたものは伝統的な風景ではなく、普段見向きもされない些細な物たちでした。
    影の中にある、道沿いの小さな発見、それは芸術的な測量といえるかもしれません。

    今回、その個展を再度構成し直してスタジオクラの母屋にて展示されます。

    巨匠の写真に再び会える機会です。前回お見逃しの方、残り二日ですが、ぜひご来場ください。

    peterさんの写真に思わず手がのびる子ども。写真の「見せ方」にも注目です。
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    ■参考レポート「Peter Granserトークイベント at 紺屋2023」

    ■スタジオクラ個展「Peter Granser [Schatten Felder] 展示風景」

     

    peterPeter Granser(ペーター・グランサー)

    写真家【オーストリア】
    写真を独学で学び、2001年にはWorld Press Photoのマスタークラスに招聘された他、数々の賞を受賞。作品はヒューストン・ファインアーツ・ミュージアムをはじめアメリカ、スペイン、スイス、ドイツなどの多数の美術館に収蔵されている。これまでに「Sun City」、「Alzheimer」、「Coney Island」、「Peter Granser 2000-2007」、「Was einem Heimat war」などの写真集を出版。
     
     
     
     
     
     

  • 拝殿を復活させた作家、黒崎加津美(美術家/日本)

    拝殿を復活させた作家、黒崎加津美(美術家/日本)

    展示作家、黒崎加津美の紹介です。

    今回一番謎のベールに包まれていた黒崎さん。

    東京藝術大学 大学院 漆芸専攻修了
    東京藝術大学 美術学部 工芸科卒業

    という経歴をお持ちの黒崎さん。稲荷山でどんな展示をなさるのかスタッフ一同、一番予想がつかなかった作家でもあります。
    そしてオープニングを終了して、スタッフから「黒崎さんの(展示)すごいよ!」そんな言葉を耳にするようになりました。

    ご本人に未だお目にかかれていませんので、作品についてとやかく書くのも野暮だな、と思い、黒崎さんのfacebookでの設営の様子、彼女が稲荷の拝殿をどのように復活させたのかをお伝えするのが一番だろうと思います。
    なぜならば、稲荷神に捧げる彼女の作品は、設営の過程それ自体も神への奉仕だと感じたからです。

    以下、黒崎加津美さんのfacebook(以後FB表記)より抜粋します。

    kurosaki960
    「この奥ノ院をきれいにして展示します」と主催者にお伝えした瞬間、山の神様が喜んでくれている気がしました。

    そんな一言から黒﨑さんの設営奮闘記が始まります。

    今週より、奥ノ院リノベーション開始。泥棒が入ったのでしょうか?荒れています。

    黒崎加津美FBより
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    まずは、廃墟となり生き物の住処と化した建物内の清掃から始めました。
    因みに、山道からの草むしりは、母が一人でやってくれました。

    黒崎加津美FBより
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    第1回目の掃除では、水がないので、ウエットティッシュで拭き掃除をしました。

    祭壇も動物の糞の山でしたが、祭壇の上の写真は割愛いたします。
    この場所の掃除に関しては、神社関係者にマナー等確認してから作業をしました。

    黒崎加津美FBより
    d

    何もない床を拭いているのに、何度もヤモリがティッシュに飛び込み巻き込まれてくるので、たくさんのヤモリに怪我を負わせてしまいました・・・。

    長年の雨風、動物達の生息の跡、電気も水道もない山の中、お母さんともども大変な作業をさせてしまいました。

    土間。土がたまっているのか、動物の糞の山?鼬か何かの亡骸もあります。
    糞がセメント化していて、ヤスリを使ってもなかなか削れません。

    黒崎加津美FBより
    b

    湿度が高く漆が早く乾いてしまう為、朱色の漆がダークブラウンに変色してしまい四苦八苦。
    東京藝術大学漆芸科 三田村教授からアドバイスを頂き、展示ギリギリに、明るめの色の赤に仕上げる事ができました。

    黒崎加津美FBより
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    床は、朱合漆(しゅあいうるし)を使って無垢材が雨に穿たれて濡れているイメージで制作しました。
    床が変わっただけで、自然の猛威に対する畏怖や神への感謝の感情が湧く空間になったように思います。

    黒崎加津美FBより
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    私自身、漆の力に驚かされました。

    雨が無垢材を穿って濡れているイメージの床。黒崎加津美FBより
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    今回、神様への奉納に使用させて頂いたお米は、百笑屋さんの無農薬米です。

    ちなみに百笑屋は権九郎稲荷のお隣、五郎稲荷を管理している農家さんです。

    『お米は、米という字の通り、お百姓さんが八十八の手間をかけて育ててくれているのだ。と母親から聞いて育ちました。
    八十八はたくさんという意味なのでしょう。
    私の制作テーマである、決断の前の迷い、という観点から考えると、多くの決断の末の収穫、ということになります。
    そのように大切に育てられたお米を、お稲荷様に奉納するイメージで作品にしました。
    奥の院自体にも漆を塗らせて頂きましたので、荒ぶる自然からの収穫を感じてもらえたらと考えております。』

    黒崎加津美FBより
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    朱漆を塗った棒の上に糸島の無農薬米を置いています。
    パラパラと米を置く作業は呪術的な感じがしました。
    kurosaki_rice

    シシ神の森♪ 急勾配の山道を毎日のように登りました。

    黒崎加津美FBより
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    文章、写真ともに黒﨑加津美FBより抜粋させていただきました。

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    自然と格闘しながらも、その大変な作業を楽しみながら行っている黒崎さんの作家魂に脱帽です。
    このように設営の時から稲荷神と対話し、米を奉納した黒﨑さんの作品をご覧いただけるのも、残すところ後2日間です。

    この機会にぜひ、足をお運びください!

    ***

    kurosaki01黒﨑 加津美(Kurosaki, Katsumi/くろさきかつみ)美術家

    福岡県出身、東京藝術大学大学院修了(漆芸)。 第9回ベラドンナ・アート展大賞受賞。アーティストインレジデンスEspace des ARTS SANS FRONTIERES, Paris, France。国内外でインスタレーション、絵画、写真の発表を行う。

     

     
     
     
     
     

  • 展示作家紹介、谷尾勇滋(美術家/日本)

    展示作家紹介、谷尾勇滋(美術家/日本)

    展示作家、谷尾勇滋の紹介です。
    日常風景や記憶などを題材にしながら、新たな写真表現を探求している谷尾さん。最近ではまちなかアートギャラリー2013での作品が記憶に新しいのではないでしょうか。

    谷尾勇滋 / 2012年の個展より「soundgraphy」(福岡市街、須崎町問屋街の風景)
    風景とともに、その場所の環境音を写像にするという作品。
    tanio_works

    そんな谷尾さんの表現方法は、糸島の山の中よりも混沌とした街中の方が親和性が高いような印象があります。
    なぜ糸島芸農に?
    そんな疑問を谷尾さんにお伺いしました。

     

    「糸島芸農が開催される松末地区の穀倉地帯の美しい風景、またそこを取り巻く集落の印象、このような場所で芸術祭が展開されていることに美を見出しました。
    私は作品を制作する上で重視するのは、もともとそのまちが持っている原風景というか、その地域特有の風景の美しさというものがあると思いますが、そうしたものにおいて、単なる懐古的な視点で捉えるのではなく、風土や風習によって生きている風景(人々が大切にしてきたもの、守ってきたもの、あるいは時代の変遷の波に打ち勝てなかった痕跡)その中にこそ重要な価値があるのではないか、と考えています。

     

    展示作品の取材写真 / 糸島松末、稲穂の実った穀倉地帯の写真
    松末取材
    展示作品の取材写真 / 故郷である広島県尾道市、港町尾道の写真
    尾道取材1
    それが近年では急速な都市開発や地域開発によって、私たちの生活は便利になりつつありますが(当の私自身もそれを享受している)、そのことによってどの都市や地域に行っても同一で特徴のない光景を目の当たりすることが多くなってきました。
    また、過疎地域では若年者層の都市への流動化、その反動によって生じる高齢化、果ては人口減少となり、次第に活気を失っていきます。
    それを食い止める手段として、新興住宅地などの誘致で再興を図ろうとするも、その開拓によってまたひとつ風土や風習が失われていくという負のサイクルのようなものに陥ってしまいます。
    そうした矛盾点についての考察も現代においては重要なことであると考え、問題点という観点から、作品として扱うテーマの一つになっています。
    この糸島芸術祭のようなアートプロジェクト事業の他、地場産業や地産地消商品の開発によって、地域のより良い資源を無駄にすることなく生かしていき、活性化を図る取り組みも最近顕著になってきていますが、こうした解決策も一つの鍵でしょうし、よい方法であると僕は思っています。(現実的な情勢や資金面のやりくりも大変だとは思いますが…)」

     

    稲荷山を下見中の谷尾さん
    P1030859
    また、今回のテーマになっている権九郎稲荷の山にどんな印象をお持ちですか、との問いかけに

     

    「稲荷山の雰囲気・・・密林が佇む様子、木の葉がかすれ合う音、山の匂い、どこかに獣が潜んでいる気配・・・
    これらが稲荷という眼に見えない存在を醸し出しているように感じました。
    ちょうど、山の中腹の赤い祠のたもとに、 はしごの作品を展示することになり、そのことが人間が使う為のものではない、山に棲む生物(神々の化身??)が使う為ものではないのか?
    という、当初 山で感じて打ち出したコンセプトを強調するかたちになり、イメージに近いものになったのではないか、と思っています。」

     

    山中に展示してある作品を製作中の谷尾さん。
    P1030968
    最後に二点の作品を出展している谷尾さんに展示作品の着想やコンセプト、また作品の見所など教えてもらいました。

     

    「神社本殿で展示している写真作品は、“稲荷という存在は私たちの日々の生活の営みの中にこそあるのではないか”という着想で制作したものです。
    稲荷山で展示している作品は、実際に山を歩き感じた何か神懸かり的な空気感、未知なるもの、天に向かう、という抽象的な事柄を表現したオブジェのインスタレーションです。
     故郷である尾道の路地に鎮座する稲荷祠や、魚売りの行商人の歴史について調査した資料付きという写真作品の見所として、稲荷の祠とそこに暮らす人々との関係性に注目してご覧ください。」

     

    松末地区の稲穂の写真は、神へのお供物というスタイルでの展示方法に注目のようです。
    稲荷山中腹の赤い祠のたもとにある作品の見所として、
    稲荷山で集めた枝で組上げた6m程の大きなはしご、天へ延びるその佇まいに注目です。

    「展示作品から思考したり、その表現を楽しんだりして頂けたらと思います!」

    芸術祭も残すところ後2日間、皆さんぜひとも現地にて作品をご覧になってください。

     

     

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     谷尾勇滋(Tanio, Yuji/たにおゆうじ)美術家

    1978年広島県尾道市生まれ、福岡市在住。九州産業大学大学院芸術研究科修士課程美術専攻修了。
    2000年から活動を開始する。日常風景や記憶などを題材にしながら、新たな写真表現の可能性を探求した作品を制作している。近年では様々なアートプロジェクトに参加している。
     
     
     
     

  • 作り続ける作家、永武(美術家 / 日本)

    作り続ける作家、永武(美術家 / 日本)

    展示作家、永武の紹介です。
    永武さんは個展を中心に活動されている地元、糸島のアーティストです。

    デザイナーとして広告代理店に勤務していた永さんは、33歳の時に安定した会社員生活から芸術の世界へ飛び込みました。
    当時、デザインは手作業で組むことが主流な時代だったそう。
    しかし、経験を重ね、時代がデジタルに移行する中で、ディレクションすることへの比重が大きくなりだした仕事に違和感を感じ、自身の内面と向き合う芸術の世界へと方向転換されたそうです。

    アトリエにさりげなく糸芸のフライヤーが貼ってあります。うれしいですね~。
    IMG_0698

    「アートは自分を表現するもの」そうきっぱり言い切る永さん。
    また(自分の創作活動に)現代アートの感覚はない、ともおっしゃいます。

    油絵の原始的な技法である、テンペラ画を中心に創作活動している永さん。
    その他、廃材や流木等、道に落ちているものも作品へと昇華しています。
    絵を描くのが苦しくなったらオブジェを作ってるんです、と何気なく言った言葉に自身と対峙し続ける永さんが見えたように感じました。

    P1030650
    IMG_0712アトリエには、テンペラ画だけではなく、エッチング、版画、オブジェと様々な作品があり、その創作レンジの広さにも驚きます。とにかく、いつも何かを作り、手を動かし続けている永さん。
    作りたい物が溢れてくるだけなんです、とこれまた当たり前のようにお話されます。

    またご自身の創作テーマは「自然物を使うこと」と教えてくれました。
    顔料と卵を混ぜて描くテンペラ画もしかり、食品トレイのような発泡スチロールを用いてエッチングしたり、台風の後は素材になる色んな物が落ちているんですよね~、と言われたり…。

    発泡スチロールを使ってエッチングした作品
    IMG_0714
    「素材にね、作らされています。」
    身近なものを自分の一部のように創作媒体にしている永さんの作品。この言葉が、どこか詩的で憂いを湛えた永さんの作品を象徴しています。

    IMG_0717元鍛冶屋を自身の手でリフォームしたアトリエに、これまた自身の手で真っ白く塗り固められたキャンバスなど、このアトリエ自体から、ここにあるほとんど全てのモノが永さんの手で、何かしらの手を加えて再生されている、ということに、「創作」を生業とした芸術家の凄さを感じました。
    未だにすすが落ちてくるんでアトリエには不向きな場所なんですけどね、そんなことも柔らかな笑顔でぼやく永さん。
    今回の展示作家の中ではベテランの域に入る永さんですが、もしかすると一番、創作のエネルギーに溢れている作家かもしれません。

    P1030641稲荷の山でも、とある場所に来るととても苦しく感じ、気持ちがざわつくのだと言います。

    その場所に捨て置かれているモノ達をどうにかして作品にしてあげたい、そう感じた永さん。

    名も無い、私達では見過ごしてしまうようなモノ、それを永さんが作品として命を吹き込み、稲荷の山に展示します。
    とても楽しみです。

    また、これまで創りためたオブジェを、室内ではない自然の中に展示する、という初の試みもされます。
    オブジェ達がどのような存在感を放つのか不安と楽しみで複雑な心境だとおっしゃっていました。

    永さんのオブジェそのものは自然物を用いて作られているだけに、何もない人工的な空間でこそ存在感を放つことができるもの。
    しかし、自然の中だと、このオブジェ達は同化しすぎてしまうのではないか、そんな話をされていました。
    作品の見所というよりも、皆さんにどう見られるのか、それを永さん自身が楽しみにしているんだそうです。

    期間中、永さんを見かけたら作品のこと、アートの事、元鍛冶屋だったアトリエのこと…、色んなことをぜひ、語ってください。

     

    P1030689永武(Ei, Takeshi/えいたけし)美術家

    1947年熊本県人吉市生まれ。
    2009年より糸島市を活動の拠点を移す。銅版画、立体、テンペラ画など様々な技法を使って作品制作を行う。

    九州各地、大阪、東京などで勢力的に展覧会を行う。所蔵、西日本新聞社、安田火災美術館、北九州美術館

  • Hannah Quinlivan(濠)個展、バレエのコラボ at closeing party

    Hannah Quinlivan(濠)個展、バレエのコラボ at closeing party

    先日レポートしたHannah Quinlivan個展「Penumbra」、彼女の作品は初日から日々変化し、そのクロージング パーティにて完成される作品でした。

    フィナーレではクラシックバレエとのコラボレーションがあるとその日、その場で決まったということもあり、こりゃ~見にいかねば、ということで追加レポートいたします。(オープニングのレポートはこちらを参照ください(さらに…)

  • Suyeon Na(韓/米)とHannah Quinlivan(濠)の個展同時開催 at Studio Kura

    Suyeon Na(韓/米)とHannah Quinlivan(濠)の個展同時開催 at Studio Kura

    先日、糸芸の本部でもある二丈のアートスペースStudio Kuraで行われたSuyeon Na(韓/米)とHannah Quinlivan(濠)の個展をレポートします。

    日が暮れるのも随分と早くなり、夕方6時頃ともなると糸島の二丈はすでに星明り。
    (さらに…)

  • 101歳の画家江上茂雄

    101歳の画家江上茂雄

    福岡県立美術館で開催されている「江上茂雄 ― 風ノ影、絵ノ奥ノ光」展覧会をレポートします。
    糸芸スタッフの間でひそかにブームとなっている江上茂雄さんの展覧会。
    それは江上さんが101歳にしてなお、風景画をつくり続けていることにも驚きなのですが、美術の特別な勉強もしていなければ、名声を目指すわけでもなく、既成の芸術やモードにとらわれることなく、毎日欠かさず身近な日常を描き綴った絵画達だからです。しかも、江上さんはどの作品にも失敗はない、と言われるそうです。

    (さらに…)

  • ダンディな米国人アーティスト、Alan Cernakに会ってきました。

    ダンディな米国人アーティスト、Alan Cernakに会ってきました。

    現在アートインレジデンスでStudio kuraに滞在中のAlan Cernakさんの個展が、いよいよ今週土曜日にせまってまいりました。

    前回、Studio kuraにお邪魔した際、事務所のテーブルに黄色の可愛い奴が見事な存在感を放っていて、ずっと気になっていました。そのピカチュウの制作者が今回のレジデンスアーティストのAlan Cernakさん。
    巨匠感漂うもの静かなダンディ、アランさん。おそるおそる声をかけてみると、気さくな方で一安心。
    (さらに…)