月: 2019年12月

  • 鞴祭りと、注連縄作り

    鞴祭りと、注連縄作り

     

    糸島芸農に於いてメイン会場となる松末権九郎稲荷神社で、初冬の行事「鞴祭り(ふいごまつり)」が執り行われました。また、その翌週にはいくつか点在する稲荷各社の注連縄を取り替えるため、新しい注連縄を作って奉納する神事がありました。

    現在、Studio Kuraのレジデンスプログラムで滞在中の外国人アーティストたちは、両方の取材を行い、写真作品やドキュメントフィルムの制作を進めています。何人かは実際に縄を編む体験もしました。見るは易し行うは難しで、難なく縄編みを進めていくお年寄りの手付きをみていると簡単に出来そうに思いますが、実際にしてみると思った通りの仕上がりにはならず・・・。それでも、なんとか完成させた注連縄。地元の人たちのものと合体させて、奉納する注連縄の一部に混じえてもらいました!貴重な体験をありがとうございます。

      

    さて、地区の最長老のおじいさんは御年90歳目前。外国人アーティストからの「糸島の好きなところはどこですか?」という質問に、松末地区の魅力について語って下さいました。「自分は生まれてからずっと松末に暮らしている。松末には昔から残っている風習やいい行事がたくさんある。(今日の稲荷の神事のような)こういった集落のことが廃れていくのは心配だ。止めようという声が上がることもあるけれど、自分としては、いいことだと思うから止めないで続けていって欲しい。」このようにおっしゃっていました。

    糸島芸農は、松末地区全体に広がって行う芸術祭です。芸術祭の時に地域の方たちが作品設置や、レジデンスの海外アーティストとの生活を受け入れてくださっていると感じるのは、こういう地域で行っている習わしを大切にする気持ちが自然と根付いている土地であるからと感じます。糸島芸農の実行委員は、集落の行事にも普段から加わって地域の人と活動を共にしています。長く守ってきた先人達の意志を継いで、これからも温故知新の精神で集落の行事も大切にしていきたいものです。

  • 松末天満宮「神待ち」神事

    松末天満宮「神待ち」神事

    11月29日、二丈松末地区にある松末天満宮では『神待ち(かんまち)』が行われました。これは、神無月(旧暦10月)の行事で、出雲に出かけられていた神様が地元へ戻って来られる時期に併せて、その目印に火を焚く神事です。

    数日前から地区の人たちで、この日に焚くための「たきもん」を集めます。普通の焚き火のイメージとはまったく違う大迫力の大きな炎が上がる為、たきもんも大きな木の枝などが集められ、うず高く積まれていきます。ひとたび火がつけば、木が爆ぜる音が鳴り響き、火花もバチバチと飛び散り、夜空にとても美しく炎が燃え上がります。夕方から深夜まで燃やし続ける為、交代で番をしますが、火が落ち着いてくると焼き芋をしたり焚き火を囲んで世間話をしたりと、ほのぼのとした雰囲気もみられる神事です。

    今、日本でどれぐらいのところがこの神事を執り行っているのかは不明ですが、糸島ではまだいくつかの神社で行われているようです。しかしながら、行事について調べようと『神待ち』をWeb検索してみたところ、家出少女が泊めてくれる人を探すための掲示板ばかりが上位に表示され、大変驚きました。時代の変遷で言葉の使われ方がこんなにも違ってしまうことがあるのかと、事実にやりきれない気持ちになります。

    もしかすると「神待ち」を検索をして、このブログを目にする少女もいるかもしれません。その子には「子どもシェルター」という言葉をぜひ検索して欲しいと思います。行き場なく人生の迷子になってしまっている子が、間違った場所へ辿り着きませんように。ここだよと、目印を掲げてくれている場所がちゃんとあります。安心して過ごせる居場所をみつけてくれることを心から願っています。