2020年のテーマは「身体尺度(ヒューマンスケール)」
等身大の私たちの生活から地続きに、アーティストたちがそれぞれの表現を展開します。点在するアート作品を巡り、作家の思考の軌跡を辿ることで、自と他を知り、対話を促す機会に出来ればと考えます。
かつて日本や中国で使われていた長さや面積、体積といった単位は、すべて身体を基準にしていました。尺(しゃく)は親指の先から中指の先までの長さ、石(こく)は一人が一年に食べる米の収穫量、反(たん)は一石の米を収穫する面積に由来しています。
近代以降、尺貫法は世界共通のメートル法に変わり、国際的に単位が統一され、交換や取引や移動が可能になりました。しかし、その自由と引き換えに、私たちは、常に何かと比較され、競争に曝され、評価に脅えているのではないでしょうか。また、尺度に囚われるあまり、違いを排除しようという不穏さも見受けられます。
経済学者の玉野井芳郎氏は、晩年の著書で「ヒューマンスケール」という概念の重要性を説いています。顔の見える地域のライフスタイル、人間に制御できる適正な規模のテクノロジー、水と空気・地球あってのすべての循環。それは振り返りである以上に、現代の私たちにとって新しい視点でありえるでしょう。そこを探る試みが2020年の糸島芸農です。
春から初夏へと移ろう糸島の田んぼ、海、山に囲まれて、一人ひとりの身体に合った尺度を見つけに行きましょうか。ヒューマンスケールな世界を歩きましょう。