Peter Granserトークイベント at 紺屋2023

アーティスト×糸島

5/15 Studio kuraに滞在中の写真家Peter Granserさんのトークイベントが、天神大名にある紺屋2023で行われました。
今回はアーティストインタビューの代わりにそのトークイベントをレポートいたします。

19才で写真家を目指し、独学で勉強したPeterさん。はじめは新聞のカメラマンからスタートし、雑誌撮影等で生計を立てるようになりました。その内、クライアントに指示された写真だけではなく、もっと自由に撮影がしたいとの思いから、自身のテーマに沿って撮影する今のスタイルになったそうです。
ドイツを拠点に活躍されているPeterさんですが、70~80年代のアメリカの写真家から影響を受けて今の作風になったそうです。

Peter Granser

そんなPeterさんの写真家としての活動を、2000年から2012年にかけて制作された写真集やプロジェクトを、ひとつひとつ紐解くように話は進みました。

 

★「Sun city」

アメリカ、アリゾナ州にある退職後のコミュニティ“Sun city”という街が題材となっている写真集。

報道カメラマン時代にこの街の存在を知ったそうです。高齢化社会にフォーカスを当てた作品ですが、インパクトある被写体は登場しません。

何気ない風景やインテリアを静かに捉えた写真が、そこに住む人がどんな人なのかを想像させます。

Peter Granser/suncitiy

 

例えば、壁に整然と立てかけられた無数の杖達、「この杖はこれから亡くなっていくであろう人々を象徴しているんだ」とPeterさんは言います。この街には三回に渡り訪問して住人達と関係を築き、撮影されたそうです。

PeterさんのHPより作品をご覧いただけます。→ http://granser.de/sun-city.html

 

そして「Sun city」の後に再度、高齢者にフォーカスを当てた作品を発表します。

 


★「Alzheimer」

シュッツトバルドにあるアルツハイマー専用施設を舞台とした写真集。
「suncity」の時は引いた写真ばかりでしたが、この写真集では、もっと人物に寄った画を撮影することにしたそうです。

なぜなら「アルツハイマーにより記憶が失われていく恐怖や、忘れてしまった今までの人生などのストーリーが高齢者の顔に刻まれていたから」とPeterさんは語ります。

Peter Granser/Alzheimer

「彼らはその病気により、なぜ自分たちが私に撮影されているのか理解できてないのです。そんな困惑したポートレイトによりこの写真集は他のものとは違うものとなりました。」

PeterさんのHPより作品をご覧いただけます。→ http://granser.de/alzheimer.html

 

★「Coney Island」

ブルックリンにあるかつて行楽地として栄えた「コニーアイランド」を舞台にした写真集。

今は閉園した浜辺にある遊園地を中心に、砂浜の風景やそこで出会った人々が収められています。
多くの写真家がこの場所を撮影のモチーフにしてきたがそのほとんどは白黒写真なのだそうです。

しかし、Peterさんの写真集は色彩豊かで光をたっぷり含んだ写真に仕上がっています。

Peter Granser/Coney Island

ポップなのにどこかノスタルジックでメランコリックな写真達。
しかし、ふいにその写真集を開いた時、若者で賑わったアミューズメントパークには場違いであったろう兵士募集のポスターが現れ、そして、その隣りのページにはジュースを手にした若いカップルと背後の壁にNOと書かれた写真が見開きになっています。

そんな対比を意識した構成の写真集にしたのだとPeterさんは言います。
他にも浜辺に散乱したゴミ、点在する空っぽなゴミ箱達。
幻想的な写真のようでいてその場所に置き去りにされた何かが、私たちの心にさざ波を立てるような不思議な写真集です。

PeterさんのHPより作品をご覧いただけます。→ http://granser.de/coney-island.html


★「Signs」

テキサスで撮影。ジョージ・W・ブッシュの出身地でもあり、JFケネディが暗殺された現場がある政治的、軍事的、経済的要素が混ざっている街。

コニーアイランドでの制作活動で政治的背景に興味を持ち、アメリカという国を視覚的に表現することを考えたとPeterさん。それがこの保守的な街での撮影をする動機になったそうです。
Peter Granser/sings

 

巨大な十字架を肩に背負った初老の男性、掲げられた意味深なスローガン、乾いた荒野、“アメリカ”という国の断片を集めたような写真集です。また、誰かの物であったかのような少々汚れた装丁が印象的な写真集です。


こちらから写真集の内容がご覧いただけます。http://vimeo.com/21615532

★「J’ai perdu ma tête」

精神病院で撮影されたフランス語の写真集。 
「彼らはロストマイヘッド ロストマイマインド、生きてはいるけど社会から隔離されている存在です。」とPeterさん。
Peter Granser/J'ai perdu ma tête

 

「精神病院の写真は患者が暴れていたりとエキサイトな印象を与える撮り方をしているものが多い。しかし私はサイレントな写真を撮るように心がけたんだ。」とpeterさんは語ります。
写真集では見開きで患者のポートレイトを載せ、その患者のアップと引きの絵を隣り合わせにすることで彼らと街で出会ったような印象を与える構成にしたそうです。

PeterさんのHPより作品をご覧いただけます。→ http://granser.de/jai-perdu-ma-tete.html

 


★「Was Einem Heimat War」

この写真集のドイツ語は日本語に訳しにくいのだそうです。しいていうなら“故郷”という感じでしょうか。

ドイツのひとつの村を、軍のトレーニング施設にするということで住人達は土地から追い出されました。
「戦争により変わってしまう故郷」がモチーフになった作品だそうです。

軍隊の訓練の場として100年以上使用されてきた土地には、防空壕や地雷が埋まった立ち入り禁止の場所があり、故郷というものが戦争により変化したことを象徴する地域でもあります。

人々は故郷を追われ、そこに建った軍事施設は戦争の終結とともに風化し、さらにその過去を森が覆い隠すように生い茂っている。
そうした人工的なものと自然とが混ざり合う事で私たち写真集を見るものに、土地の歴史を感じさせます。

PeterさんのHPより作品をご覧いただけます。→ http://granser.de/was-einem-heimat-war.html

 

★「Heaven in Clouds」
中国の重慶で撮影。急激に変化する自分たちの場所というテーマのプロジェクトです。
中国で急激に進む都市開発、街は至る所で古い建物が壊され、舞い上がる粉塵は人工的な雲のように中国の空を覆い尽くします。
政府もこの急激な変化をコントロールできずにいる、そんな都市開発が人や自然に与える影響というものがテーマとなっています。

中国ではおなじみのネオンの光りそのものを撮影したり、中国人のポートレイトをビデオで撮影した作品はこれまでの写真集とまた違った印象を私たちに与えます。
その動画のポートレイトは、カメラの前で微動だにしない人物達の映像で出来ており、一瞬、見る物に写真のような印象を与えますが、よくみると瞬きや息使いで動画だということがわかるおもしろい作品です。

3Dで作られた展示会場予定図に並んだ10個の動画ポートレイト。その会場に立つと10人の息使いが聞こえてくる、インスタレーション的な要素が含まれた作品です。

PeterさんのHPよりプロジェクトの内容がご覧いただけます。→ http://granser.de/heaven-in-clouds.html

 

***

 

まだまだ、作品解説は続きましたが今回は代表的なものを抜粋させていただきました。

写真集の装丁などにもこだわりがあるPeterさん。本にする事で全ての写真を多くの人に見てもらえ、長く作品とつきあうことができると言います。
他にも新聞紙のような不安定な材質にプリントされた作品なども紹介されました。「だんだんと本が痛むことで、時の経過を感じさせるんだ。」など、装丁へのこだわりについても語っていました。

Peter Granserトークイベント at 紺屋2023

 

また、会場から「人物を扱った作品に関して、どういった下準備をしているのか?」といった質問には

「街を歩き回り、出会った人に尋ね、その人にまた誰かを紹介してもらう。自分の思うがままに行動する。
撮りたい場所や人に断られることも多いが自分が本当に撮りたいんだという強い意志を持ち続つづけることが撮影の原動力になるんだ。」と言われていました。

また今回、なぜ糸島をレジデンスに選んだのかと問われ、
「日本には前から興味があったが機会がなく、以前クラにレジデンスアーティストとして滞在していたJuliane Eirich(ユリアーネ アイリッヒ/ドイツ)からクラの話を聞き来日を決めた。」と言われていました。

 

今回のトークイベントでPeterさんの色彩豊かな作品には、懐かしさやロードムービーのような暖かみを感じさせる側面と、居場所を無くした者達の哀愁や社会問題を静かに訴えかけてくるような力強さを感じました。

そんなPeterさんの最新作が今週5月25日から始まるStudio kuraでの個展で見る事が出来ます。

 

ペーター・グランサー 個展「Schattenfelder -畑道にそって-」

日時:5月25日~6月2日 11時から19時まで 入場無料
※25日17時よりオープニングパーティーを行います。

企画:Studio Kura 福岡県糸島市二丈松末586
場所: 福岡県糸島市二丈松末586
[電車]JR筑肥線一貴山駅より徒歩15分 (駅からの送迎あり)

詳細はStudio kuraのHPからご確認いただけます。→ http://www.studiokura.com/blog/?p=3150

 

PeterさんがパートナーのBeaさんと共に日々、自転車で糸島を動き回り、撮影した作品です。
Peterさん本人に直接作品について聞く事ができるまたとないチャンスでもあります。
当日はオープニングパーティーも開催されます。
ぜひ、遊びにいらしてください。

写真家Peter Granserの詳しいプロフィールも合わせてご残照ください。→http://studiokura.info/residence/peter-granser/

 

 

タイトルとURLをコピーしました