作品紹介「Real Talk Real Online」(大澤寅雄・牧園憲二)

コロナ禍によって延期になった糸島芸農。そのテーマ「身体尺度 / ヒューマンスケール」が、これほど問われる状況があるだろうか。密閉、密集、密接、不要不急の外出を避け、会議や打ち合わせや飲み会までもがオンラインに集約されてしまっている中で、私たちの身体は一体どこにあるというのだろう。
初めて糸電話を作ったのがいつだったか。糸と紙コップを伝わってくる向こう側の声と、紙コップを持つ指に伝わる僅かな振動を思い出す。糸と紙コップと指先を伝ってくるこそばゆい感触と、素朴な心の振動を、だだっぴろい空間で、味わいたいと思った。
糸が緩んだり風が吹いたりすると相手の声は聞き取れない。聞き違いをしたり、想像で補ったり、誤解が生じたり。コミュニケーションなんてそんなもんだ。
いい年をした大人が、田んぼのこっちと向こう側で、どうでもいい話を糸電話で話している、その頭上で、ヒバリたちがいい声で鳴いている、ただそれだけの映像。
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