拝殿を復活させた作家、黒崎加津美(美術家/日本)

2020年参加アーティスト

展示作家、黒崎加津美の紹介です。

今回一番謎のベールに包まれていた黒崎さん。

東京藝術大学 大学院 漆芸専攻修了
東京藝術大学 美術学部 工芸科卒業

という経歴をお持ちの黒崎さん。稲荷山でどんな展示をなさるのかスタッフ一同、一番予想がつかなかった作家でもあります。
そしてオープニングを終了して、スタッフから「黒崎さんの(展示)すごいよ!」そんな言葉を耳にするようになりました。

ご本人に未だお目にかかれていませんので、作品についてとやかく書くのも野暮だな、と思い、黒崎さんのfacebookでの設営の様子、彼女が稲荷の拝殿をどのように復活させたのかをお伝えするのが一番だろうと思います。
なぜならば、稲荷神に捧げる彼女の作品は、設営の過程それ自体も神への奉仕だと感じたからです。

以下、黒崎加津美さんのfacebook(以後FB表記)より抜粋します。

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「この奥ノ院をきれいにして展示します」と主催者にお伝えした瞬間、山の神様が喜んでくれている気がしました。

そんな一言から黒﨑さんの設営奮闘記が始まります。

今週より、奥ノ院リノベーション開始。泥棒が入ったのでしょうか?荒れています。

黒崎加津美FBより
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まずは、廃墟となり生き物の住処と化した建物内の清掃から始めました。
因みに、山道からの草むしりは、母が一人でやってくれました。

黒崎加津美FBより
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第1回目の掃除では、水がないので、ウエットティッシュで拭き掃除をしました。

祭壇も動物の糞の山でしたが、祭壇の上の写真は割愛いたします。
この場所の掃除に関しては、神社関係者にマナー等確認してから作業をしました。

黒崎加津美FBより
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何もない床を拭いているのに、何度もヤモリがティッシュに飛び込み巻き込まれてくるので、たくさんのヤモリに怪我を負わせてしまいました・・・。

長年の雨風、動物達の生息の跡、電気も水道もない山の中、お母さんともども大変な作業をさせてしまいました。

土間。土がたまっているのか、動物の糞の山?鼬か何かの亡骸もあります。
糞がセメント化していて、ヤスリを使ってもなかなか削れません。

黒崎加津美FBより
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湿度が高く漆が早く乾いてしまう為、朱色の漆がダークブラウンに変色してしまい四苦八苦。
東京藝術大学漆芸科 三田村教授からアドバイスを頂き、展示ギリギリに、明るめの色の赤に仕上げる事ができました。

黒崎加津美FBより
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床は、朱合漆(しゅあいうるし)を使って無垢材が雨に穿たれて濡れているイメージで制作しました。
床が変わっただけで、自然の猛威に対する畏怖や神への感謝の感情が湧く空間になったように思います。

黒崎加津美FBより
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私自身、漆の力に驚かされました。

雨が無垢材を穿って濡れているイメージの床。黒崎加津美FBより
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今回、神様への奉納に使用させて頂いたお米は、百笑屋さんの無農薬米です。

ちなみに百笑屋は権九郎稲荷のお隣、五郎稲荷を管理している農家さんです。

『お米は、米という字の通り、お百姓さんが八十八の手間をかけて育ててくれているのだ。と母親から聞いて育ちました。
八十八はたくさんという意味なのでしょう。
私の制作テーマである、決断の前の迷い、という観点から考えると、多くの決断の末の収穫、ということになります。
そのように大切に育てられたお米を、お稲荷様に奉納するイメージで作品にしました。
奥の院自体にも漆を塗らせて頂きましたので、荒ぶる自然からの収穫を感じてもらえたらと考えております。』

黒崎加津美FBより
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朱漆を塗った棒の上に糸島の無農薬米を置いています。
パラパラと米を置く作業は呪術的な感じがしました。
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シシ神の森♪ 急勾配の山道を毎日のように登りました。

黒崎加津美FBより
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文章、写真ともに黒﨑加津美FBより抜粋させていただきました。

***

自然と格闘しながらも、その大変な作業を楽しみながら行っている黒崎さんの作家魂に脱帽です。
このように設営の時から稲荷神と対話し、米を奉納した黒﨑さんの作品をご覧いただけるのも、残すところ後2日間です。

この機会にぜひ、足をお運びください!

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kurosaki01黒﨑 加津美(Kurosaki, Katsumi/くろさきかつみ)美術家

福岡県出身、東京藝術大学大学院修了(漆芸)。 第9回ベラドンナ・アート展大賞受賞。アーティストインレジデンスEspace des ARTS SANS FRONTIERES, Paris, France。国内外でインスタレーション、絵画、写真の発表を行う。

 

 
 
 
 
 

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