糸島芸農2018テーマ「マレビトの通り道」

「私の考へるまれびとの原の姿を言へば、神であつた。第一義に於ては古代の村々に、海のあなたから時あつて來り臨んで、其村人どもの生活を幸福にして還る靈物を意味して居た。」(折口信夫「國文學の發生(第三稿)」より)

九州北部に位置し、東に福岡市、西に唐津市に挟まれた糸島は、海峡を挟んで朝鮮半島や中国大陸と近く、古くから大陸との窓口として繁栄してきました。かつて松末村と呼ばれた糸島芸農の開催地には、唐津街道が東西に伸びています。

古来からその道を、海の向こうから渡ってきた人々が歩いていたことでしょう。そして現在も、世界各地からアーティストがこの地を訪れ、滞在し、同じ道を歩いているのです。

民俗学者の折口信夫は、マレビト(稀人・客人)を、海の彼方から村人の生活を幸福にして帰る霊(みたま)を意味すると言いました。だとすれば、この地を訪れるアーティストは、マレビトなのかもしれません。いや、アートと出会うために来る客人もまた、マレビトなのかもしれません。

そこは、マレビトが訪れ、出会い、帰っていく道。過去から未来につづく「マレビトの通り道」なのです。

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